2003年マラウイへの旅16 リビングストンの木と妻が以前住んでいた家
2003年12月29日
コタコタのセントアンズホスピタルの入り口の所は広場になっており、教会も建っている。中心にリビングストンの木というのがある。スコットランドの探検家リビングストンが、1861年に、ここで奴隷商人たちと、奴隷貿易をやめるように交渉をしたらしい。この木のすぐそばに小さな家が建っている。妻が2001年春から1年間暮らしていた家だ。今は別のマラウイ人の女性が居住していたが、事情を説明すると家の中を見せてくれた。
煉瓦造り、トタン屋根の質素な家。煉瓦で家を建てるのはマラウイでは一般的だ。住む人が変わったので家の中の様子は変わってしまっているが、もちろん間取りなどは昔のままだ。通りがかりのマラウイ人が窓から中をジロジロ覗いていくので、家の回りに垣根を作ったのだが、それもだいぶ壊れてしまっていた。
水道と電気は通じているが、停電や断水が頻繁にあり困ったとの事。断水すると遠くの井戸まで水を汲みに行かなくてはいけない。シャワーは付いていたが出るのは水だけ。これも断水の時は使えなくなる。毎日暑くて汗だくなのに…。調理器具は電熱線コンロがあるだけ。停電の夜はローソクの灯が頼りだったという。こんな家でもまだまだいい方で、山間の集落に派遣された協力隊員や、アメリカのボランティア学生などは、水道の無い家に住んでいる人もいるらしく、現地の人と一緒に井戸へ水汲みに行くのが日課だったらしい。リロングウェにいるJICAの職員との連絡は、専用の無線機が設置されており、安否確認のために毎週決まった時間に一斉連絡が入り、それに返信しなければいけないとの事。
コタコタ周辺に派遣された隊員は他にいなかったが、ある日一人の日本人が突然訪ねてきて英語で話しかけてきた。実はアメリカ合衆国のボランティア Peace Corp. でコタコタに派遣されていた Mr. Noriyuki Murakami 、通称Noriちゃんであった。Noriちゃんの両親は日本人だが外交官をしており、彼はオーストリアのウイーンで生まれ育ち、その後アメリカに渡ったのだという。その間に日本語をだいぶ忘れてしまっていたらしい。それから Noriちゃんや、仲間のアメリカ人学生ボランティア達との交流が始まった。時には休暇で訪ねてきた日本人ボランティアも加わり、辛く孤独になりがちな辺地での生活は、一転して楽しく充実した生活になったという。またアメリカ人の中に混じっての生活は英語力のめざましい向上に繋がり、仕事にも役立ったという。またNoriちゃんは、コタコタでのHIV/AIDS患者さんの支援活動も行っていた。
※2005年の春、妻と私はニューヨークを訪れ、一週間ほどNoriちゃんのアパートに滞在させてもらった。ニューヨーク市内の観光の他、ボランティア経験者たちと会ったり、コロンビア大学の講義に潜入させてもらったりした。彼は今医師を目指し医学部で勉強中だ。夏休みなどを利用してマラウィを訪れ、コレラなどの感染症対策の活動を続けている。卒業後はまたアフリカで働きたいと語っていた。
※2006年に購入して読んだ栗田和明氏著「マラウィを知るための45章」の中に私たちを驚かせる記載があった。44ページにリビングストンの木が紹介されている。45ページの写真には、リビングストンの木と一緒に、妻が住んでいたあの家が写っている。更に135ページにはコタコタが紹介されていて、<「こんなところをわざわざ訪ねる日本人もいるまい」と思ったが実際にはそうでもなかった。私が訪問した時にも、前年に日本の青年海外協力隊の方が訪ねている事がわかった。>と書かれている。訪ねているどころか、この木の横で生活し、仲間も集まっていたとはさすがの栗田氏も知らなかったようだ。リビングストンの木の写真は、栗田氏のホームページ「アフリカ案内」の中にも紹介されている。一枚目の写真の右端と、二枚目の左側に写っているのが妻の住んでいた家だ。撮影は2002年との事なので、妻が引っ越した直後ぐらいだろう。
| 固定リンク
「旅行・地域」カテゴリの記事
「2003年マラウイへの旅」カテゴリの記事
- Mzuzu Coffee(2014.08.31)
- 書評 「アジアで出会ったアフリカ人」(2011.05.26)
- 地球サポーター マラウイ編が楽しみ(2010.01.10)
- 頑張れマラウイオリンピック選手団(2008.08.08)
- アフリカンフェア2008 マラウイブース(2008.06.09)
「アフリカ」カテゴリの記事
- アフリカ日比谷フェスティバル(2016.07.10)
- 南アフリカ西ケープ州の旅43完結 マンデラが自由を勝ち取った場所(2016.03.13)
- 南アフリカ西ケープ州の旅42 Franschhoek(2016.03.06)
- 南アフリカ西ケープ州の旅41 Lavendar Farm Guest House(2016.03.01)
- 南アフリカ西ケープ州の旅40 Franschhoecへの移動(2016.02.25)
コメント