カンボジアの旅23 バンテアイスレイ(1) 破風
2007年9月24日(月)
バンテアイとは砦。スレイは女。女の砦という名前のこのヒンドゥー教寺院は、アンコールワットやアンコールトムよりも古く、967年に建てられたと伝えられる。この寺院が有名なのはデヴァターを始めとするレリーフが美しく、精巧であるためだ。どのガイドブックにも東洋のモナリザと書かれている。誰がそんな宣伝文句を作ったのかはわからないが、ダ・ヴィンチがモナリザを描き始めたのは1503年だから、それよりも500年以上も前の作品をモナリザと呼ぶ事は、私にはナンセンスに思えるし、このレリーフを彫り込んだ無名の彫り師に対して失礼では無いかと思う。(^^;)
そんな戯れ言はさておき、バンテアイスレイの訪問はとても楽しみにしていたものである。楽しみにしていた人は世界中に多数いるらしく、混雑している。小さな寺院なので尚更。参道から少し離れた所から楽器の演奏が聞こえてくる。
東門から入ると、参道の両側にリンガ(シヴァ神の象徴であり、男性器を模したもの)が立ち並ぶ。敷石は硬いラテライトでできている。写真右側に写っているご婦人は BeatocelloのコンサートのTシャツを着ている。
東参道の脇に、崩落した破風が無造作に置かれている。柔らかい赤色砂岩でできており、精緻な彫刻が施されている。アンコールワットやアンコールトムとは明らかに異なる雰囲気で、芸術性の高い装飾だ。ラーマーヤナの物語から魔王ラーヴァナがシータ姫を攫おうとしている場面が描かれている。
環濠に囲まれた中心部にはこじんまりとした伽藍が高密度に並んでいる。
中央伽藍への入り口となる第二周壁の塔門。堂々とした風格を漂わせている。
この破風の装飾も有名だ。上段中央にヴィシュヌ神の妻ラクシュミーが描かれ、左右の象が聖水を灌いでいる。下段はおなじみのガルーダとナーガのユニット。主題となる像をしっかりと中心に描き、周囲に細かな模様で装飾を施しているのが、バンテアイスレイのレリーフの特徴であるように感じられる。
踊るシヴァ神。左にカリーカラミヤ王妃。美しすぎる自分をめぐって争いが起こるのを憂い、破壊の神であるシヴァ神に美貌を破壊して欲しいと頼んでいるらしい。(美しすぎるって罪ね…。)右側には太鼓を叩くインドラ神の姿が。
第三周壁の中に入る。写真左側が中央祠堂、右側が北の経堂である。
骨組み部分は硬いラテライトで造り、装飾を施す部分は赤色砂岩で作られている。
中央祠堂の裏側に回る。壁面に多数のデヴァターが彫り込まれている。(デヴァターの写真は次回の記事で紹介する。)中央祠堂の周辺はロープが張られて立ち入り禁止になっている。デヴァターをよく観察するためには、望遠レンズや双眼鏡を持っていく方が良い。
瞑想するシヴァ神。左側は妻のウマ。瞑想を止めさせようとしたウマの願いにより、愛の神カーマがシヴァ神に矢を射ようとしている。その時シヴァ神の額にある第三の目から光線が発射され(ウルトラセブンみたい)、カーマは焼かれてしまった。ウマはカーマの復活をシヴァ神に願いカーマの魂はよみがえった。愛の魂は不滅というお話。
上に描かれているのが、阿修羅を退治するために瞑想するシヴァ神。下にはそれを阻止しようとする魔王ラーヴァナは、10の頭と、20の腕を持つ。(そんなにあったらこんがらがりそう。)おびえる僧や、シンハ、象などの動物たちの姿も描かれている。
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