国立湊病院の記憶1 内科医師総引き上げの危機
昭和60年に、国立病院・国立療養所の再編成・合理化の基本指針が策定され、これを受けて昭和61年に再編成の全体計画が発表されました。静岡県伊豆半島にあった熱海、伊東温泉、湊の3国立病院はいずれも統廃合対象となりました。概ね10年間を目処として再編成を進める計画でしたが、地元関係者の反対や大赤字の国立病院の経営を引き継ぐ担い手も無く、計画はなかなか進まない状況にありました。
平成5年春。静岡県南伊豆町の国立湊病院では大きな問題が起きていました。勤務していた内科医師が突然総引き上げする事態が発生したのです。(現在ではこんなニュースもさほど珍しくなくなってしまいましたが。)
静岡県としても南伊豆唯一の公的病院を維持しなくてはならないとの事で、地域医療振興協会に対して医師派遣の要請がありました。これを受けて、協会から2名の医師が急遽、国立湊病院に派遣される事になりました。また自治医大地域医療学教室からも3年目研修医1名の派遣が行われました。
自治医大の卒業医師は、義務年限内(在学年数の1.5倍)は出身都道府県職員として、県内の公的病院に勤務する事になっています。しかし、上位官庁である厚生省管轄の国立病院に勤務する前例はありませんでした。しかも、既に次年度の派遣計画が決まっている状況。しかしながらあと1名国立湊病院の内科医を確保する必要がありました。
そこで、義務年限内卒業医師を、2カ月交代で国立湊病院に派遣(正確には職員割愛)する事になりました。こうして何とか内科医師4名が短期間の間に確保され、湊病院の内科診療が継続できる事になりました。これは、県からの働きかけや、自治医大卒業医師の派遣を受けている各自治体・自治体病院が医師の欠員を容認するという、理解と協力があって初めてなされた事でした。
短期派遣された医師にとっては、二重生活の不便に加え、一時的に国家公務員になって給与も減ってしまうので、経済的には何もメリットもなかったと思いますが、南伊豆の医療を守るためにとの使命感から(と、きれいな海、うまい魚につられて?)、1年間のリレーを継続しました。
平成6年3月。卒後5年目の終わりをむかえていた私は、焼津市立総合病院での後期研修を1カ月短縮して終了。国立湊病院に派遣(職員割愛)されました。これが自治医大卒後義務年限内医師の国立病院への長期派遣の第一号となりました。
4月からは卒後3年目の後輩が加わり、6月からは自治医大2期生の小田先生(現共立湊病院院長)が聖隷浜松病院を退職して国立湊病院副院長に着任しました。前年から引き続き勤務していた自治医大地域医療学教室の4年目医師とともに、ようやく内科が静岡県出身者を中心とする固定メンバーとなったのです。
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