国立湊病院の記憶6 天城越え
「天城越え」と言えば石川さゆりの歌が有名です。「戻れなくても…」と歌われた、そう、峠の向こうに行ったら戻れないような所…(~_~;) ひどいなあこの歌。
まあそれは冗談として…。伊豆の踊り子の天城越えと、国立湊病院の天城越えは逆方向で、しかも往復です。心筋梗塞や脳外科的疾患など、3次医療機関への救急搬送、それが我々国立湊病院医師の天城越えです。
天城越えをできるだけ減らしたい、というのが我々の願いであり、地元の方々の希望であり、そのために湊病院で可能な事はできる限りやる。
それでも時々天城越えが必要になります。最寄りの順天堂伊豆長岡病院(現在は順天堂静岡病院)まででも、70km、1時間半の道程。そしてその殆どは山道です。国立東静病院(現NHO静岡医療センター)だと80km以上、静岡県立こども病院ともなれば140kmの長距離になります。
湊病院に着任した医師は、最初の数回、この天城越えで必ずひどい車酔いに見舞われます。救急車の中では横座りの上、鳴り響くサイレンのおかげで自律神経系が乱されます。患者さんや、同乗のご家族に「大丈夫ですか。」なんて声を掛けながら、実は自分が大丈夫じゃなかったりします。患者さんが嘔吐すると、容態が悪化したのか、車に酔っただけなのか判断が付きにくく、不安にかられます。
それでも何度か乗るうちに慣れてきて、気合を入れれば酔わなくなります。しかし、深夜の搬送など寝不足や体調不良の状況だと、不覚にも酔ってしまう事があります。
当直医が天城越えに出掛けてしまうと、往復3時間以上戻ってこない事になります。その間は別のドクターが呼び出されて当直をします。大変ですが、お互い様なので仕方がありません。
最近はドクターヘリが飛ぶので、日中の天城越えは大分減ったのだと思います。しかしヘリコプターは有視界飛行なので、天候不順や夜間については相変わらず救急車での天城越えとなります。当時と比べても天城越えの道路はあまり改良が進んでいないので、その大変さも相変わらずでしょう。
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コメント
天城越えでの救急搬送は確かに大変かと思います。先生も患者さんも・・。TVのニュースか何かで知りましたが、年々ドクターヘリの救急搬送回数は毎年増加みたいですね。新設の病院にはヘリポーが出来て近隣の市町村を始めとする伊豆七島の救急も手がける位の病院にする?とか・・。??
Drヘリの補助金額も年間の出動回数を何百回までと計画して補助金を国が出しているとか?それを越えた分はヘリコプターの運航を任されている会社が負担するとか?TVで言っていましたが、年々補助金額が増えて、これ以上出動回数が増加すると支払えないとか・・?
となると救急搬送に「有料のヘリにしますか?無料の?救急車にしますか?」と家族に選択をしてもらうような笑えない話になるかもしれませんね。
私の家も年寄りがいて、いつ救急車のお世話になるかと思えば不安で一杯です。
そんな不安を解消してくれる立派な病院の設立をお願いしたいものです。
投稿: 一市民 | 2009年9月15日 (火) 09時12分
一市民さまのおっしゃるように,「立派な病院の設立」を願っています.
9月12日伊豆新聞1面に,「14日に新病院移行協 管理基本協定書など協議」という記事がありました.
組合が,新病院についての協議を,14日午後7時から下田市役所で行う予定という記事です.
組合ホームページによると,そのメンバーは組合正副管理者,組合議会正副議長,組合議会特別委員会委員長,聖勝会理事長・病院長(内定)です.
ひきつづき今後の情報に注目したいと思います.
以下は,これまでの新聞記事からの印象です.そもそも1市5町で形成される一部事務組合も,内部では利害関係が生じているようにみうけられますし,地元医師会も医師会長と理事との間で意見の相違があるようにみうけられます.本当はどうなのか知ることができませんが,限られた町の財政の少なくない金額を投資して,かけがえのない住民の命と安全を守る,やり直しのきかない事業が,十分な議論もなく,おこなわれることは,許されません.
このようにいわゆる権威(行政,医師会)が崩れた状態で,住民にはこれを監視することしかできないのでしょうか.
投稿: ご | 2009年9月15日 (火) 10時48分
きのじゅんさま,みなさま.
新たな新聞報道です.
9月16日伊豆新聞1面に「共立湊病院組合 医師確保など確認」との記事です.
9月14日下田市役所で開かれた第1回新病院移行協議会の内容が掲載されています.協議会メンバーは7人で構成され,会長は鈴木南伊豆町長,副会長は伊藤組合議長です.
西川理事長は,「指定条件である三科の常勤医師十人以上という最低条件を満たした」が,医師名は「現時点では出せない」.「産科については交渉中」.同協議会は,「開院に伴う雇用説明会を早期に開催する必要があるとの認識で一致した」とあります.
記事には,今後の開催日程や,協議すべき議題のアウトラインについては触れられていません.この記事からは,今回は密室・非公開でおこなわれたように見受けられます.今後,市民に向けて議論の段階で公開されるのかどうか気になります.
たとえば,現在の湊病院の職員でもない,聖勝会でもない,議員・行政職でもない,一般住民の主催で,下田市民文化会館などで,「新病院についてもっと知る会(仮称)」を開催してはどうでしょう.もちろん,そこには,町長にも,聖勝会にも,現在の職員にも,参加してもらい,これまでの経緯や,いま,この伊豆南地区の医療は何が問題になっているのかを提起してもらいましょう.誰かをつるしあげるのではなく,それぞれの立場で行動を変えていかなければ,「振興協会」が「聖勝会」になるだけで,根本的には変わらない問題が潜在しているのではないでしょうか.
これはあくまでひとつの提案です.住民が,地域医療に参加することができないかなという疑問から出発したものです.議論の発端になればと思います.
投稿: ご | 2009年9月16日 (水) 13時36分
ご さんいつもコメントありがとうございます。
住民の方々の自発的な活動に私も大いに期待しています。
投稿: きのじゅん | 2009年9月17日 (木) 00時25分
一市民さん、いつもコメントありがとうございます。
新病院の計画から、次第に景気のいい話は消えてきているようです。20名の医師確保も、いつの間にか10名の指定最低条件を満たすというレベルに変わっています。新聞報道には出ていない事も多々あるでしょう。新病院指定管理者選定委員会の報告書 http://www10.ocn.ne.jp/~minatohp/data/shiteikannrisya/shinbyouinsenteiiinkaigyoumuhoukoku.pdf の3ページの(4)で懸念されている事項がどうなっているのかも、まだ殆ど表には出てきていません。
投稿: きのじゅん | 2009年9月17日 (木) 00時35分