湊病院問題 伊豆新聞2月25日の記事 東伊豆町議会と下田消防定例会から救急搬送について
年度末を迎え、様々な会議が行われているようですね。2月25日の伊豆新聞の記事から2つご紹介します。
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まずは、東伊豆町議会定例会開会に関する記事。湊病院に関しては、飯田議員さんの一般質問で「伊東市民病院が25年をめどに新築する計画と聞くが、わが町としてはどう考えるか」と質問。太田町長は「賀茂医療圏にあり新しい共立湊病院が早くたちあがってほしいと願っている。ただ、運営面で町への負担が多くなる場合は伊東市民病院への対応も考える必要が出てくるかも知れない」と答弁したとの事です。
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共立湊病院組合を構成する市町の中では、最も関係が薄いと言える東伊豆町ですが、町長さんが場合によっては「伊東市民病院への対応も考える必要が出てくるかも」と言うことは、一部事務組合脱退の可能性を示唆したものなのでしょうか。確かに、現在の一部事務組合の枠組みでは、残された僅かな月日で6市町の意見を統一することは難しいのかもしれません。
新しい伊東市民病院の建設計画は伊東市単独で進められている話であり、今から直接東伊豆町が計画に加わる事は無いと思いますが…。現実には東伊豆町の急性期医療は稲取の伊豆東部総合病院さんだけでは対応が難しくなり圏域外への搬送が増えているようです。伊東市民病院へも稲取、熱川などから1時間近くかけて、救急搬送されてきます。
平成20年度の東伊豆町消防年報の救急統計のPDF9ページによりますと、搬送人員807人のうち、管外搬送が356名で実に44%。搬送時間で見ると30分以内で搬送できているのが223名でわずかに28%しかありません。搬送に60分以上かかっているのが257名(32%)とむしろこちらの方が多いぐらいです。これではいかに救急救命士が頑張ったとしても心肺停止の患者さんを助ける事ができません。
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もう一つの記事は下田地区消防組合定例会に関するものです。8月1日から1月末までの救急出動件数などが報告されていました。これによると、救急出動は1456件(前年同期比+83件)、搬送人員1327人(+20人)。搬送先は、共立湊病院が813人で全体の61.3%(管内搬送の81.2%)、管外搬送は325人で全体の24.5%。ドクターヘリの搬送要請は64件で64人が搬送され、内訳は外傷22人、脳疾患15人、循環器疾患(心筋梗塞など)が10人と書かれていました。
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6カ月間の統計なので、年間の搬送数を単純比例計算で推測すると、搬送人員が約2650人、うち湊病院に搬送される数が約1630人、4.5人/日程度という事になります。伊東の統計が伊東市のホームページ内にありますが、年間4061名とのデータが出ています。ちなみに田方消防(伊豆市、伊豆の国市、函南町)が平成20年度5256人だそうです。西伊豆消防の統計は残念ながらネットで見つけられませんでした。
人口は下田市、南伊豆町、河津町合計が約43000人、東伊豆町約14000人、伊東市約71000人、田方123000人。人口比で考えると下田消防では人口16人あたり1人が搬送された事になり、東伊豆が17人に1人、伊東が約18人に1人、田方が23人に1人となります。下田の通年のデータが無い上、観光客の数なども考慮していないので乱暴な計算ではありますが、賀茂郡や伊東の救急搬送件数は田方地区よりもかなり多い印象があります。高齢化率の違いなども影響しているのかも知れません。
もし湊病院消滅という事になれば、出動した救急車はどこに行くことになるのでしょうか。伊東の40%。東伊豆の2倍。田方の30%に相当する数です。隣接する医療圏への影響はかなり大でしょう。
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ここまで書いた所で、時間になったので院内研究発表会に行ったところ、非常にタイムリーにも、伊東消防本部の方から平成21年の救急活動の発表がありました。伊東の救急統計を少し追加しておきます。
平成21年の伊東消防本部の救急出場件数 4250件、搬送人員 4059人。うち心肺停止129件。救命処置実施は除細動 11件、気道確保 51件、静脈路確保 26件、薬剤投与 14件。ドクターヘリについては、要請件数73件で、搬送件数68件。(天候不良等で搬送できなかった分が5件という事だと思います。)うち、現場から直接要請があったものが34件。転院搬送が39件で、そのうち28件が伊東市民病院からの要請でした。
なお、この4000人強という搬送人員は、全国平均で考えると人口13-14万人の都市に相当する数だそうです。伊東の人口が7万人強ですから、全国平均とはだいたい人口35人に対して1搬送ぐらいなのでしょうか。とすると、下田消防は平均の倍以上という事になります。言い換えると共立湊病院は全国平均としては人口約9万人相当の都市の救急を、1施設で背負っているという事になります。
伊東市民病院に関しての数字では、直接搬送が2379人、転院搬送受け入れが223人、転送受け入れが58人で、合計2660件。全搬送の2/3を受け入れている計算です。逆に転院搬送で送り出した数は175人で、うち順天堂静岡病院へが65人だったそうです。
順天堂静岡病院の統計も見てみました。三次救急病院で重症度が高いので数を比べても仕方ないのですが、救急車台数が平成18年4300件、19年5452件、20年4866件。心肺停止の受け入れ件数は、各年106件、122件、148件と書かれています。
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コメント
平成22年4月10日の静岡新聞の記事の中に下田消防署河津分署の平成21年救急搬送件数が書かれていました。管外搬送(南伊豆・下田・河津以外への搬送)が48%、209件との事ですから、計算すると全体の搬送数が435件という事になります。記事で書いた下田消防全体の統計と見比べると、搬送件数では15%程度である河津分署が、管外搬送件数では約1/3を占めるという事になるのでしょうか。
投稿: きのじゅん | 2010年4月15日 (木) 17時43分