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2010年3月27日 (土)

湊病院問題 伊関友伸著 「地域医療 再生への処方箋」 から

 最近ちっともニュースがありません。色々な事が進んでいるはずですが、水面下に潜っているようですね。

 そんなわけで、ニュースに関連しない話題を提供してみます。表題の本を読んで色々と納得したり、考えさせられたりする事が多くありました。内容の一部を紹介します。

 伊関友伸氏はもともと埼玉県の職員であった方ですが、自治体病院に関する行政や地方議会のあり方について、厳しい意見を述べています。最初に断っておきますと、特定の部分を抜き書きしていきますと、いかにも書籍全体がそのような趣旨で書かれているかのように思われがちですが、特に自治体を攻撃しようとかそういう意図の本ではありません。自治体病院の再生のために、行政、議会、住民、そして医療者がどのように行動をしていったら良いのかを提言している本です。巻頭の「はじめに」の最後の部分を引用しておきます。

----------引用始め----------

「地域の医療は、すべて「国任せ」「人任せ」では、残すことはできない。地域をあげた地域医療や自治体病院の再生への取り組みが必要である。本書が、その契機となれば幸いである。」

----------引用終わり---------

 書籍は、1から7章に分かれており、1から4章では、銚子市立総合病院の破綻、奈良県の自治体病院、沖縄県立6病院、夕張希望の杜 について、実例を上げて経緯や問題点を指摘しています。第5章では、兵庫県の「柏原病院の小児科を守る会」と千葉県東金市の「地域医療を育てる会」の活動を紹介し、自治体病院の再生に住民がどのように関わっていけばいいのか提言しています。

 第6章「まちの病院(医療機関)」をなくさないために必要なこと は全体の纏めとして。第7章 自治体病院の赤字について考える では、自治体病院の企業会計や、会計処理、累積欠損金などについての解説や、総務省公立病院改革ガイドラインの問題点が指摘されています。

 今回は、行政や地方議会が、いかに自治体病院を破壊してきたかという部分に関して述べている部分を一部引用してみました。

----------引用始め----------

44ページ

 「自治体病院が崩壊する原因の一つに「政治リスク」がある。都道府県知事や市町村長などの首長や地方議会議員が医療に対して無理解であることが、医療現場のやる気を失わせ、自治体病院を崩壊させるのである。」
 「千葉県の銚子市立病院の医師の大量退職は、当時の市長が病院長の給料を月額9万3000円引き下げたことが契機となっている。病院長の働き自体は、何も落ち度が無く、一生懸命病院のために働いていた。行政改革の観点から役所の一律ルールで給料を下げたのである。このことが、医師を派遣している大学が銚子市の病院に対する姿勢を疑問視する事につながり、教育関連病院としてのランクを引き下げる結果になった。たった100万円程度の削減で、13人の医師の退職を招き、軽く10億円を越える損失を招いたのである。」

47ページ
「地方議会議員も自治体病院にとって大きなリスク要因となる。」「地方議会や地方議会議員が地域医療を破壊していることが多いことを強く感じる。」「銚子市立病院の病院長は医師の招へいに全力で努力をし、実際に成果を上げていた。その努力に対しての銚子市議会議員の発言は理不尽であり、「暴言」というべきである。」「一部の市議会議員による病院や医師への攻撃が、現場で働く医師たちの心を傷つけていたという。」

49ページ

「首長や地方議会議員に、自治体病院を危機に陥れる行動をさせているのは、結局は、首長や地方議会議員を選ぶ住民である。言い換えれば、住民が首長 や地方議員にすべて「お任せ」であることが、首長や地方議会議員に好き勝手な行動をさせているのである。」

249ページ

「医療専門職と行政の間には深刻なコミュニケーションの溝があるといえる。」「医師は専門職として、自らの技術に誇りを持ち、納得できる仕事をした い。専門職に対する敬意・感謝がモチベーションにつながる。しかし、行政は、行政の形式的規則に従って運営することが第一で、予算・人事管理も硬直的であ る。」「組織文化は無意識のものであり、その意識を変えるのは非常に難しい。」

----------引用終わり---------

 共立湊病院においても、地方議会や組合議会で批判が繰り返されてきました。その歴史は国からの移譲以前まで遡ります。

 昨今では、病院側と一部事務組合は完全に対立状況に陥っています。現場で働く医師のみならず、全職員の心が傷つけられてきたと思います。また、こういった事が日本中の公立病院で見られる問題である事もわかりました。

 伊関氏の指摘する「コミュニケーションの溝」は、今回湊病院問題について取り上げる中で、私も痛感しています。

 

第4章の夕張希望の杜に関する部分からの引用です。

----------引用始め----------

 173ページ

 

「そもそも多くの夕張市民が喜んで村上医師の夕張市入りや病院の診療所化を臨んだわけではない。」「昔の総合病院時代のやり方を望む住民は、村上医師を嫌い、できれば村上医師を夕張市から追い出したいと考えている。その数は相当の数におよぶ。」

「夕張市議会議員は、夕張市民の反村上医師の意識を色濃く反映した集団である。1-2人を除いて、夕張市議会議員のほとんどが反村上医師である。特に徹底的に村上医師を嫌う議員が3-4人おり、夕張市議会をリードしている。」

----------引用終わり---------

 自治体の財政破綻で有名になった北海道の夕張市ですが、村上智彦医師が立ち上げた夕張希望の杜が、破綻した市立病院を有床診療所+老人保健施設に転換して運営を続けています。村上医師は、平成7年から9年にかけて自治医大地域医療学教室の後期研修医として2年間国立湊病院に派遣され、一緒に仕事をしました。

 マスコミなどでも繰り返し取り上げられ、世間的には成果をおさめていると思われている夕張希望の杜 ですが、この本を読みますと、夕張市民や、市議会との間に厳しい対立がある事がわかりました。自治体から資金援助の口約束を反故にされて、個人で借りた1億円の運転資金がショートして、 破綻寸前に追い込まれたり、大変な苦労の元に運営を続けている事がわかります。

 引き受けてが現れなかった市立病院。伊関氏らの依頼を受け、個人で巨額の借金を背負い、不退転の覚悟を示して運営に当たっている人を、住民や地方議会は追い出そうとしていると言うのです。恐ろしさを感じるとともに、問題の根深さを再認識させられます。

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コメント

ご紹介の書籍への深い読み込みに敬意を表します。
伊関氏とは、昨年とある講演会に講師としておいでになった時に、お話をしたことがあります。湊病院の現状についてもよくご存じで、ねぎらいのお言葉をかけていただきました。伊豆南部地区の医療行政についてもご考察があるようでしたが、ゆっくり伺う時間がとれませんでした。

投稿: ご | 2010年3月28日 (日) 16時36分

話題提供です。
「地域医療を守り・育てる住民活動全国シンポジウム」(主催:地域社会振興財団、後援:総務省・厚生労働省・自治医科大学・全国知事会・全国市長会・全国町村会・NPO法人地域医療を育てる会・「知ろう!小児医療 守ろう!子ども達」の会)に昨年参加しました。
地域医療に関心を持つ、自治体、ボランティア団体などの代表者が出席して、大変興味深いシンポジウムでした。熱心なところでは首長が医療行政担当者を連れて参加しており、驚きました。
昨年は、パネラーからの発表と、それを受けてグループワークをしながら、各地域で医療を継続するために苦労していることの情報共有、成功事例の検討など具体的・積極的な内容でした。

今年は、7月3日・4日に予定されているようです。会場など詳細はこれからアップされるようです。

検索してみてください。

投稿: | 2010年3月28日 (日) 17時28分

私も以前、健康福祉プランナー養成塾(主催:地域社会振興財団)に参加したことがあります。2週間とやや長いですが、地方自治のしくみ、現場の調査研究手法など幅広い健康福祉に関する講義・演習・情報交換と大変有意義なものでした。私が参加した時には偶然伊東市職員の方とご一緒して、湊病院のことで意見交換をしました。
参加者は、保健師、ソーシャルワーカー、行政の医療・福祉・保健担当者、医師など幅広い職種にわたり、大変有意義でした。
興味のある方は、同じく検索してみてください。

投稿: | 2010年3月28日 (日) 18時03分

初めてコメントします。
地域医療を守り・育てる住民活動全国シンポジウムは、
千代田区永田町の都道府県会館で開催の予定のようです。
http://www.jichi.ac.jp/usr/tiik/meeting_detail.html?dt=100703-04chiikiiryou juuminkatudou.txt

投稿: DRMJ | 2010年3月29日 (月) 21時24分

ご さん、匿名さん、DRMJさん コメントならびにシンポジウムの紹介をありがとうございます。賀茂郡の住民の方は今のところ典型的な「お任せ」状態ですが、問題意識を持つ方の中から少しでも参加があるといいですね。今後もこのような研修会やイベント等の情報がありましたら、御紹介下さい。

投稿: きのじゅん | 2010年3月29日 (月) 23時13分

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