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2010年6月17日 (木)

湊病院問題 平成22年3月の下田市議会議事録を読み込む5 土屋誠司議員質問

 引き続き3月8日の議事録から抜粋していきます。PDF73ページ以降の土屋誠司議員の一般質問です。質問項目と、それに対する答弁を並べる形で再構成しましたが、一部切り分けに苦労しました。この後の議会では、湊病院問題に関する議論は殆どありませんでしたので、市議会議事録紹介は今回で終了です。

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◯組合派遣職員の人件費負担

●土屋議員

 施政方針の主要な施策の第3に、公立病院建設に賀茂地区の中核を担う総合病院として新病院の早期建設のために最大限の努力をし、不退転の覚悟で臨んでいく。新病院建設及び開院準備に向け職員を病院組合に派遣する。この職員の派遣費用は、予算書は増えていないんですけれども、下田市の負担になるのかについてを伺います。

●市長

 22年から職員派遣をいたしますね、1名。これについて費用負担が下田市で出てくるのかというような話が出てきましたが、現在は全部交付税措置の中でやらさせていただいています。今、共立に職員もいるんですが、これは国から来る交付金の中で、病院会計の中で回しておりますので、同じような仕組みで、例えば1名下田から増員になっても、その辺のことは病院会計の中で、交付金の中で全部処理をさせていただくということで、自治体からの負担金というのは発生しない、こういう考え方でやっているわけです。

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◯地域医療振興協会との歩み寄り交渉

●土屋議員

 5日の鈴木 敬議員の答弁には、新たな指定管理者がなかった場合には地域医療振興会は公益法人などで指定管理を受けざるを得ないと、吉新理事長の言質はとっているとありました。公募条件で引き受け手がなかった場合は地域医療振興会が引き受けるのであれば、ここへ来て、まだ新たな委託先を探しているようでは、時間的には無理ではと思います。私は、今、地域医療振興協会と条件などの歩み寄りの交渉をすべきと思います。というのは、昨年4月20日に、地域医療振興会から何か文書が出たと聞いておりますけれども、それについてはどうだったかということと、これについての副管理者である市長のお考えを伺います。

●市長

 それから、地域医療振興協会等の条件の歩み寄りの交渉をすべきということで、副管理者である市長の考え方と言われるんですが、なかなかこういう立場でありますと、構成市町の一担当ということでございますので、私のほうからはこういうことをやるとか、これはだめだとかということは言えない立場ということをご理解いただきたいと思います。

 医師の不足というのが病院閉鎖につながっているということで、今回の公募条件とかいろいろなものが時代を見失ったということ、これも同じことでございまして、すべては6人の首長が合意をしたところがまだ生きて、公募条件で探すということが今行われているというふうに理解をしていただきたいと思います。もう一つ、文書が来たとか何とかということを聞いた、何でしょうか。

 12月の議会で議員が質問された件ですよね。あれは、地域医療振興協会から、公募する前に病院組合に対しての質問だか、要望書みたいなのが出てきた件ですよね。それについては、12月議会の中で答弁できなかったんですけれども、そういうのがありましたねということで、私のほうで資料を探して見せましたよね。それでいいんですか。

 あれは、多分運営会議の中では検討していなかったと思うんですね。病院組合のほうの判断で、ただ受け付けておいたという形だったと思います。後でまた見てみます、すみません、ちょっと今あれなものですから。

●市長

 先ほど4月20日の文書というのも、先ほど言ったやつを思い出しました。あのときは、公募する前に地域医療振興協会が要望書というのを病院組合に出してきたんですね。当時、我々は、その前の年のも12月に改革推進委員会の出てきた答申でいこうと。建築費もこうだ、医療機器もこうだとかということも全部合意してスタートした経過があります。それから4カ月ぐらい遅れてから、公募に入る前に指定管理者のほうから出てきたのは、まずは減価償却を全額負担するのは無理だよ、これを見直せということと、建設費の額というのは、我々は病院の建物等全部入れて、医療機器も入れて25億という大体感じで、これでみんな合意したんですね。これだったら病院が運営できるだろうと。当時、地域医療振興協会が県の企画部と何かいろいろ打ち合わせをしていて、県のほうからも提案されたのが、地域医療振興協会が医療機器は約15億、建物関係に35億、合計50億なんですよ。我々が25億で病院を建ててやろうという計画の中で、 50億という計画を地域医療振興協会が県と話しながらやっている。僕らは、それにあと南高の跡地を5億で買う。すると大体30億じゃないですか。向こうはそれにまたプラス5億ですから55億、こんな金じゃ、とても病院を建てられないという中で合意をしたものを、要するに建設費が少ないから見直せと。もっと立派な病院を建てろというようなことを要求してきたのが1つあります。それで2つですよね。

 あとは、医療機器につきましては、我々は4億ですよというのが交付条件だったんですが、向こうはそれをもっと額を上乗せしろということで、先ほど言いましたように、県と地域医療振興協会が話をしたのが15億です。約14億何千万という金額だったと思います、約15億、それから、地方交付税という政策交付金をもらって我々病院組合を運営しているんですが、それを、病院を運営する側によこせということなんですね。そうすると、病院組合のほうにはほとんどお金が入ってこないと。減価償却のある程度の部分しか入ってこないというような部分になる。5つ目に、建築する場合には指定管理者の意見を十分に反映しろと。これは当然のことだと。だから、5つ出してきたうちの4つが、ちょっと法外な要望というのが、さっき議員が言った4月20日の要望書の内容です。以上でございます。

●土屋議員

 内容はわかりました。こういうことがあったというのをみんなで共有してというか、その前に、答申は自治体負担がなくて病院運営するということになりましたよね。病院改革委員会の答申は、自治体の負担なく、そういうので病院を公募するとなったんですけれども、今の社会情勢を見れば、そんなただで病院運営ができるわけはない。そういうことを首長間で、自治体負担がなくて、それをゴーサイン出して公募に踏み切ったという、その辺についてのとき、踏み切る前に……

●土屋議員

 今の、来たことなどを皆さんで話し合って、今までやってくれたんだからということもこの前言って、そういうことに何も配慮されないでやったのか、その辺を聞きたかったんですよ。何かやっていないみたいに聞くから、本当かどうかを聞きたかったんです。

●市長

 ですから、構成している6市町の首長の考え方が違うというのは、そもそもお金を出すのは嫌だよというところが幾つかあるわけなんですよ。だから、病院組合の運営に対してお金を出すんだったら抜けるよとか、我々は関与しないとかというような議論が進められてきた中で、当初スタートした公募条件というのは、皆さんの6つがそれこそ一致してこれでやろうという合意ができているというのが、基本的に今でも生きているというようなことなんですね。だから、当時こういう要望が出てきても、我々が25億で病院を建てようというものに対して、全部で50億というものじゃ、とてもじゃないけれども病院を建てた後に租税の、自治体が大変な後年度負担をするということになると、全くまとまらなかったんですよ。ということが大前提で進んできた経過があって、今現在もその合意は生きているということなんですね。そこまでしか僕は言えません。

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◯寄附金は当初から医師招聘にと交渉したのは事実かどうか

●土屋議員

 病院組合は、地域医療振興会に今までの利益を、病院建設するために平成21年3月3日に寄附の要望をしています。大久保婦久子、姉の神谷ち恵遺言執行者へは、慢性的な医師不足の解消に向けた政策資金として、平成21年4月9日に寄附依頼をしております。6月26日の寄附申し出があり、7月7日の大久保婦久子基金として採納しています。この寄附を依頼してから、当初から医師招聘にと交渉したのは事実かとどうかを確認します。

 聖マリアンナ大学の支援を受けた医師確保のために、病院組合は寄附講座へ年間2,000万円寄附し、院長クラスの先生を派遣してもらうとありますが、指定管理者が医師の確保をすべきで、聖マリアンナ大学へ病院組合が寄附することや、自治体病院であるのに自治体からの負担がない条件であるのに、改革推進委員会の答申そのままに公募条件としたことについて、管理者は各地で医師不足や病院閉鎖等の時代を見誤ったと思いますけれども、その辺についても見解を伺います。

●市長

 申しわけない、あと2つだけ、最後の質問わからなかったもので、もう一回、もしあったら再質問の中で言ってくれませんか。それとも、今言っていただければお答えしたいと思います。いいですか、後で。ちょっと確認します。

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◯聖勝会の辞退理由の解明と組合の管理体制

●土屋議員

 聖勝会が指定管理を辞退した理由は「医療機器や薬剤の供給妨害を目的とする事件が相次ぎ開院準備に支障が生じた」であります。運営管理者として辞退理由の解明をどのようにされたのかについて伺います。

 こういうことは、議会が調査するのでなく、まず管理者がなぜ見積が出ないとか、そういう事実をすべきであったと思います。これじゃなくて、今までのいろいろな流れを見てみますと、病院組合議会は管理者が権限を侵しているとも思いますが、管理者の見解はどうでしょうか。外から見ていると、病院組合議員は管理者のやるべきことがあって、管理者が怠っているから議会がやっているとも見えます。管理者はその点について何も言ってこなかったのか、その辺についても伺います。

●土屋議員

 共立病院のことですけれども、先ほど言って、余計なこと、いろいろなことを言われたんですけれども、ぜひこれは、外から見ていますと言えないんです、いろいろなことを。今まで言いたいなと思ったんですが、言えなかったんですけれども、今回の施政方針に出てきたからあえて聞くんですけれども、ざっとのことは沢登さんと藤井さんが言ってくれたんですけれども、その中で今一番疑問に思っているのは、組合の管理者がまとまってしっかりしていないと思うんですよ。

 管理者と運営委員会というか、首長の会議がしっかりしていないと思うの。だから、病院組合議員が執行者みたいなことをやっちゃっていると思うんですよ。あれだっておかしいと思うんだけれども、おかしいということは自分じゃ言えないでしょう。だけれども、こういうことが出てきたから聞いているんですけれども、市長はどう思いますか、副管理者として。議会がああいうことをやっているから、振興会も進まないわけでしょう。だから本当は、この前、1月末か、地域医療振興会しかないと言いながら、次はあれで引っ張ったり、そういうことがあって、ないと決まったら、幾ら市長がリーダーシップ発揮して、地域医療振興会の昨年4月20日に来た文書等をもとに歩み寄る話し合いの、そういうことに持っていって、早く皆さんの不安を解消するのが管理者の役目と思うんですけれども、どうですかね。

●市長

 組合の管理者じゃありませんので、私が余りリード的な発言はできないというのはご理解をいただきたいと思います。ですから、言葉を選びながら発言しているわけであって。

●市長

 あと管理者がどうのこうのとか、何とかということではなくて、決して、我々がまとまらないから議会が先行しているって、逆に僕らはいろいろな面で議会が動いてきてくれているということは、本当に今回は病院を建てようという目標に向かっては一致して進んでいるというふうな理解をしていますけれども。

●土屋議員

 いや、今の市長の発言はおかしいと思うんですよ。議会が進んでやってくれたからじゃなくて、これは議会が提案して、議会がやることは、それがいいかどうかを判断するわけでしょう。議会がいろいろなことを、聖マリアンナに行ったとか、そういうことはやるべきじゃなかったと思うんですよ。

●市長

 議会が先行ということじゃないんですよ。やはりチェックするのは議会ですから、我々がやることによって間違っていることがあれば、当然病院組合の議会でチェックはされると思います。しかしながら、病院を建てようということについて、議会が先行しているということじゃなくて、一緒の方向性を持って歩いているということを認識しているということなんですよ。

●土屋議員

何かぐるぐる回るから、これで終わります。

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 ここから先は個人的感想です。

 土屋議員さんも、頑張って下さいましたが、寄付金に関する質問は、はぐらかされてしまいました。

 今回の答弁で下田市長さんの本音が見えた気がします。

 地域医療振興協会が、組合に出した新病院の指定管理者に応募するための最低条件は以下の通りです。

  1. 新病院の延床面積は9000平方メートル、建設費は17億円以内と計画されているが、公立病院としての二次医療圏の中核的な機能を果すこと、耐震性を備えたものとすることを考慮すると、建設費の額が尐なく、見直しを行うこと。
  2. 医療機器整備費が4億円とされているが、相当な額の上乗せを行うこと。
  3. 減価償却費の負担について、建設費の元利償還金の一部は後年で地方交付税で措置されるものであり、指定管理者が全額負担することは困難であること。
  4. 公立病院の運営には地方交付税による財務措置がされており、財務措置された額は病院の運営費として交付されること。
  5. 新病院の建築設計に関し、指定管理者としての意見を十分に反映させること。

 市長答弁によると、このうち1-4は法外な要望であると執行部が判断し、要望書は「ただ受けておいただけ」で、運営会議(首長会議)にも諮らなかった、すなわち敢えて放置したご様子です。

 組合や市長さんの考えとしては、地域医療振興協会は、法外な要望をしてくるけしからん団体であって、ネゴシエーションする気はさらさら無かったという事なのだろうと思います。聖勝会辞退後に協会に対して意向調査を行ったのも、「困ったことになったから、何とかやってくれないか。」では無くて、「お前たち心を入れ換えて公募条件を受け入れるのなら、やらせてやってもいいぞ。」という意味だったのだとわかりました。なるほど運営協議会で議論が噛み合わなかったわけです。そしてその考えは今も変わっていないのでしょう。

 ちなみに、ご覧の通り、この要望書には、答弁に書かれているような具体的な金額などは書かれていません。県の企画部と打ち合わせて出された数字というものについては、私は情報を持っていないのですが、250床の伊東市民病院の新病院計画では建設費65億円、医療機器15億円となっていますから、このまま病床数比例で150床の湊病院に当てはめると、建設費39億、医療機器9億という見当になります。建物35億(2300万円/床)、医療機器15億という話しが、「法外」な数字であるかどうかと言われるとそうとも言えないと思いますし、ましてや静岡県も入って検討されて出てきた数字のようですから。ちなみに最近放送されたNHKのETV特集によると、公立病院の建設費の平均は3900万円/床!! との事ですから、150床で60億近い建設費になります。

 ただし、過去記事で述べてきたように、個人的には建設費は35億よりは絞り込めるのでは無いかと思います。伊東でも着工を前に建設費の削減に向けての検討が行われているようです。(新病院Q&A 6ページ)

 また医療機器への投資額は病院機能に直結します。地域に必要と考える二次救急病院機能のためにどのぐらいの機器を用意しなくてはならず、それがいくらになるのかという事であって、単純に先に金額だけ4億と決めても意味が無い事です。ちなみにMRIを1台購入するだけで億単位のお金がかかります。もちろん診断能力の高い機種ほど高額になります。(公設民営のメリットの一つが医療機器も民間の安いコストで調達できるという事も指摘しておきます。)

 いずれにせよ、一部事務組合としては、地域医療振興協会は県と結託して豪華病院を建てさせようとするけしからん団体であって、今後湊病院を運営させるつもりは無かったのだ、とこの答弁から読み取りました。

 さて、既に過去記事で解明してきた様に、寄附講座開設などの根回しは公募開始以前から組織的に行われていたものと判明しています。

 平成21年8月12日に公開で開催された一部事務組合全員協議会の中で、お二人の議員さん(ちなみに後の百条委員会正副委員長)が聖マリアンナ医大の明石理事長に面会に行った事を明かしていました。この全員協議会の様子は地元有線テレビでも放映されました。

 彼らの説明によると、平成21年5月に指定管理者公募を開始したけれど、5月末になっても応募団体が無かったため、改革推進委員でもあった明石理事長に、大学としての指定管理者への応募を依頼するため、一部事務組合の議員で相談して業務として行ったのだそうです。その時の面談で明石理事長から聖マリアンナ医大は公募に応じられないが、同窓生である西川氏が応募するようなので、協力すると言われたとの事です。

 聖勝会さんの計画を知らずに、たまたま聖マリアンナ医大に行ったら、偶然そういう話だったという事ですね。また、締め切りの2-3週間前になってから大学に応募を依頼に行ったという事ですか、ふーん。組合は寄附講座設置のための寄附金の依頼文を4月9日に出しているのですから、この時系列もちょっと不思議です。

 偶然という名の運命の糸で導かれた聖勝会さんと、某組合議員さん。その聖勝会さんが指定管理者を辞退した際、真相究明のために百条委員会を立ち上げ、率先して動いたというその気持ちはよーく理解できますな。

 まあ、それはそれとして。

 「協会外し」。そういう方針ならいいじゃないですか。ただし、その結果として地域医療振興協会に所属する現病院職員の多くが新病院には残らずに去ってしまい、職員の確保に苦労する事は覚悟の上でしょうし、万が一計画がうまく運ばなくても協会に頼る事を考えなければよいだけの話です。

 しかし、現実はそうでもなかったようです。地元出身の職員は辞めないだろうと議会でも言われていましたし、医師でも南伊豆に家を建てた人は「あいつら逃げられないだろう」とも言われていました。現病院職員からこれほど強い反発を受けると思っていなかったのでしょうね。公務員と違って、民間は組織への帰属意識が強いと言うことに気がつかなかったようです。

 そして、聖勝会さんの辞退で計画が大こけした後に、「医療の空白を回避するため」協会に頼ろうとしたのはいかがなものか。平成21年8月の全員協議会で、当時の河津町長さんが「平成23年4月に新病院が間に合わないときには、地域医療振興協会に頼むべき」と発言した時、某組合議員さんは「公募にも応じていない協会に頼むなど話にもならない」と一蹴しておられました。全くその通りですね。

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