湊病院問題 百条委員会報告書に対する感想
百条委員会報告書に逐一感想を述べてみたいと思います。
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1.報告にあたり
本委員会は、「指定管理者の辞退」に係わる事実関係を調査することを主たる目的として設置された。
その後、新病院の新しい指定管理者を決定する過程の中で、「公益社団法人地域医療振興協会(以下「協会」という)」が、指定管理の意向確認に対する回答の条件として本委員会の調査終了が上げられた。また、平成23 年4 月から平成24年4 月までの間の現病院における指定管理契約の話し合いでも同様な発言があった。
以上のことから、ある種の配慮が必要とされるという認識の中で報告書を作成した。
----------(感想)
予想された事ですが、「すり替えもみんなでやれば怖くない」。もういちど5月24日の運営協議会の議事録を読んでみてください。 「それとは関係ない。」と言明していますね。
「ある種の配慮」とは誰に対するどのような配慮を言っているのでしょうね。最後の「某医療団体」で名前を出さなかった事でしょうか?
報告書に必要な事は、公正で厳正な調査に基づく、説得力のある分析と、評価、結論…辞退理由が正当な物と考えられるのかどうかではないでしょうか。
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2.調査報告
医療法人社団聖勝会(以下「聖勝会」という)の辞退理由に係わる事実関係を調査した結果、共立湊病院組合(以下「病院組合」という)の構成市町の中に選定された聖勝会に対する不信を露わにし、新病院建設に対して一致協力するどころか「別の病院建設に取り組む」、「病院組合から脱退」の発言があるなど、聖勝会が指定管理者として病院組合と信頼と協力関係が築けない事実が存在していた。
----------(感想)
聖勝会さんや百条委員会が問題としているこれら発言の殆どは、聖勝会さんを指定管理者として議決するよりも前の事です。そのような反対意見が噴出する中で、議決を強行する事を提案したのは、組合幹部と一部の組合議員(百条委員会のメンバーとかぶっています)の方々です。
反対を押し切って強行に決めておきながら、「(決める前に)あの人たちが反対していたからうまくいかなくなったのだ」という説明には、全く説得力がありません。
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構成市町の中には、「なんとしても病院を存続させたい市・町」から「金を出すなら組合を抜ける町」、「共立湊病院が潰れても困らない町」まで病院建設への温度差は大きく、1 市5 町の組合運営の困難さが今回の事態を招いた底流にはあると思われる。
----------(感想)
珍しく、この点については同意します。^^; だから組合を解散した方が利害対立が無くなってうまくいくのではとも思います。ただし組合を解散するためには構成全自治体の議会の賛成が必要なのだそうです。つまり下田市か南伊豆町が否決しさえすれば、例え他の4町が解散を望んだとしても、一部事務組合は解散できないそうです。
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医療機器の妨害行為については、委員会としては「会話記録」等により妨害行為があったものと推察しているが、他に事実を証明するものは得られなかった。
また、聖勝会は指定管理者に決まってから、公私にわたり執拗な誹謗中傷にさらされ、多大な犠牲を強いられていた。
聖勝会から提案された「医師や資金の確保」についての実現性は、指定管理者辞退により証明することは不可能となった。結局のところ聖勝会を信用するか、しないかとなるが、「辞退表明後」病院組合内外から「予想されたこと」との発言があったことは、指定管理者の議決を行なった病院組合議会としては遺憾である。
----------(感想)
「会話記録」で推察とはどういう意味なのでしょうか。その会話記録の内容も公開せずに、どうやってこの報告書の内容を信用しろと言うのでしょうか。普通はこのような状況であれば、、「妨害の事実は確認できなかった」と結論づける物ではありませんか。
本報告書の最後に掲載されている百条委員会の開催日と内容を見ますと、中間報告があった2月19日以降は何の調査も行われていません。実は百条委員会の中間報告書によると、医療器機等関係者の証人尋問は2社3名、2社2名の2回実施となっていました。聖勝会さんが見積もりを依頼したとされるのは7社だったはず。ところが百条調査が行われたのは最大でも4社しかありません。残りの3社はどうしたのでしょうか。また、同様に辞退の理由に書かれていた「薬事関連企業に対し、薬剤の供給協力の依頼をしたところ、一社から特段の合理的理由もなく「協力できない」との不可解な回答がなされた。」という件については、中間報告でも今回の報告書においても、調査が行われた形跡すらありません。ずいぶんと中途半端な調査ではありませんか。
公私に亙る「誹謗中傷」の件についても何の具体的指摘もありません。百条委員会としてどのような点を「誹謗中傷」と認定したのか明確にしていただく必要があるはずです。中傷とは「根拠の無い悪口」という意味。公立病院の指定管理者という社会的責任に鑑みれば、期待だけではなく、批判や不安、不信の声が上がるのは当然の事で、それを中傷というのであれば、相手の言うことを無批判無条件に信じなさいと言う事でしょうか。そもそも選定委員会ですら、10項目もの懸念事項を表明していたのですが。
実現性の証明は、相手を信用するかしないか次第であるという言い分は、全く無責任です。静岡県知事も、「危ないと思っていた」と下田市での講演で述べ、この時会場から拍手が起こっていましたね。この事を組合は謙虚に受け止めるべきだと思います。
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3.設置された経過
(省略)
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4.調査項目
聖勝会の「辞退届」に記された理由とそれに係わる事項
(1) 指定管理者の公募に係わる不正問題
----------(感想)
この問題については、ブログの中で繰り返し分析をしてきました。あれから1年たち、多くの情報が後から明らかになってきましたが、情報が増えれば増えるほど、疑念は晴れるどころか、どんどん増していく状況です。
①改革推進委員会の議事録の中に、後の聖勝会さんの病院計画を予言するような発言が含まれていたり、②公募開始前から寄附金を使って聖マリアンナ医大に寄附講座を設置する計画が組織ぐるみで行われていた事が判明したり、③組合議員や改革推進委員などの方々が公募への参加を働きかけていた事が判明したり、④選定委員会のヒアリングが公募締め切り後に急に非公開になったという事実、などなど。
聖マリアンナ医大への働きかけに行ったお二人 = 百条委員会の正副委員長 というのは、ご本人たちもテレビカメラの前で公表している事実ですから、色眼鏡をかけて見られる事はやむを得ないと思います。それを払拭するような報告書であれば良かったのですが。
また、聖勝会さんに非公開の組合運営会議の議事録が渡って、それを辞退理由として利用しているのです。一部事務組合内部の人間が意図的に情報を出したと考えられます。そういう事の調査は行われなかったようです。
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(2) 河津町に別の病院を建設する事について
----------(感想)
このセクションに書かれているのは、調査では無く、百条委員会の方々の評価だけだと思います。検討すべきはこの事が、指定管理者辞退の正当な理由として認められるような事なのかどうかでしょう。そういう点については全く言及がありませんでした。
聖勝会さんの辞退時のプレスリリースに引用されていた、運営会議などでの批判的意見の殆どが平成21年8月17日の指定管理者議決よりも前の物でした。平成21年8月の全員協議会での4町長からの厳しい反対意見を押し切って、議会上程を要求したのですよね。
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(3) 医療機器の妨害行為について
辞退届によれば、「医療機器関連の業者・薬事関連企業(以下「医療関係業者」という)に見積もり依頼等をおこなったが見積り等が出てこなかった」と言うものである。
聖勝会が依頼を行った医療関係業者に対して証人尋問を行ったが、医療関係業者の回答は「見積り依頼はなかった」と言うものであった。
通常、医療機器の見積りの依頼は口頭で行なわれており、双方に裏づけとなる証拠がなく、他の調査も困難であった。
委員会では、聖勝会の代理人に対して、「医療機器の妨害」について辞退届の根拠となる証拠等の提出を求め、聖勝会の代理人より、医療関係業者との 会話記録(DVD、その反訳書)の提出を受け調査したところ、某医療団体からの圧力があった事が推察される内容であった。
委員会では、当事者に 会話を確認したところ会話の事実は確認された。
会話記録は医療関係業者の了解を得て記録したものではないことが判明した。
----------(感想)
百条委員会中間報告では、「聖勝会代理人に対して、記録送付要求書(①発注業者名、発注先の責任者、担当者名のリスト、②各業者に医療器機の見積もりを依頼した書類等の写し ③各業者との交渉記録、録音テープ) を送付し、資料の提出を求めた。」「聖勝会の記録は全て弁護士(代理人)を経て提出された。」となっています。しかし「核心部分においては、記録と証人相互の証言に食い違いが出ている。」と書かれていました。つまり片方は見積り依頼を出したと主張し、他方は見積り依頼は無かったと主張しているようです。見積り依頼文書は百条委員会に提出されたはずであり、「見積りの依頼は口頭で行われており」という話は辻褄が合いません。どうなっているのでしょう。
そもそも指定管理者の協定も結んでおらず、新病院の設計すらできていない状況で、どのような医療機器の見積もりを依頼したのでしょうか。新病院に必要な医療機器は多岐にわたり、その金額もかなりの物でしょう。それを口頭だけで7社に依頼したという説明はいささか不可解です。逆に言えば口頭で済む程度の医療機器の見積もり依頼が、新病院の開設に支障をきたすような事態を招いたと言えるのでしょうか。しかも見積依頼書は出していないのに、その会話を業者に無断で録音していたというのですから、ますます不可解という他はありません。「会話の事実が確認された」と書いてありますが、録音があるのだからあたりまえの事です。事実が確認されな かったとしたら捏造という事ですよね。
また先に述べたように、7社のうち、最大でも4社にしか証人訊問は行われておらず、何故全社に行わなかったのか、これも不可解です。薬事関連業者の件は何故無視されたのか、これも不可解です。
Twitter でこのような誹謗発言が成されていました。http://twitter.com/takashiosa/status/17489829870 「平成22年7月1日 共立湊 新病院事業調査特別委員会(100条)委員長 報告「下田への移転新築は、地域医療振興協会と河津町長(当時)が提言をし、病院組合で合意され実現に向かっていたものである。」物的証拠不十分で告発こ そされていないが陰湿・執拗な妨害は 公益認定法人の資格はない! 5:46 AM Jul 1st webから 」そのタイムスタンプはなんと7月1日午前5時46分※となっています。ずいぶん早起きだったのですね。議会で最終報告が行われたのは午後でした。サーバーに時差があるのでしょうか。
※7月6日に再確認したら、タイムスタンプが9:46 PMに変わっていました。上の記載はコピペしたものなので、写し間違いではありません。どういう事でしょうね。^^ と思って調べてみたら、Twitterの時刻は環境側の状況で、アメリカ東海岸時刻になるケースがあるみたいです。http://okwave.jp/qa/q5305546.html 今回のケースもちょうど16時間の時差なので、これに該当するかもしれませんが良く分かりません。したがって、議会報告とTwitter投稿時刻との前後関係について、タイムスタンプを元に論ずると誤りが生じる可能性がある事がわかりました。それを受けて感想のまとめの2番目の項目は消し線で訂正をさせていただきました。
某医療団体とは、地域医療振興協会であると断定しているようです。百条委員でもないのにどうして断定できるのかは不可解ですが、きっと百条委員会も同様の認識なのでしょうね。
見積もり依頼を行ったのかどうかの事実確認すらできなかったというのに、「圧力があったと推察される」とは、いったいどういう論理なのでしょうか。
----------(感想のまとめ)
- 根回しを行った議員が正副委員長を勤めたり、聖勝会への無条件の信頼を報告書内で表明するなど、百条委員会の中立性には大いに疑問があるので、住民の方は利害関係の無い機関に対して調査を要求した方が良いだろう。
- 百条委員会の中間報告や最終報告が、インターネットなどでの部外者による地域医療振興協会への誹謗活動に利用されて
おり、しかも一般公表前から報告書の内容を知っている事が判明したいる。 - 調査は中途半端。対象となる全関係者に対しての調査を行なわないまま終わっている。中間報告の後は何も調べていない。
- 見積もり依頼が行われたのかどうかさえ事実確認できていないのに、圧力があったと推察しているのは全く意味不明である。
- 見積依頼書は出していないのに、医療器機業者との会話を無断で録音していたという話しは全く不可解である。
- 共立湊病院では、辞退理由とは無関係であるはずの内部委員会の資料提出を求められたが、結局報告書には何も触れられずじまい。いったい何だったのだろうか。
- で、結局損害賠償の件はどうなるの。
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コメント
いつも鈍い突っ込みしかできなくて申し訳ありません。
このような、しっかりとまとまった突っ込みを待ってました。
(きのじゅん氏が名刀村雨なら、わたしゃハリセンがいいところ)
拍手喝采ヤンヤヤンヤ。
なるべく多くの方々に読んでほしいですね。
そして市町民に問題意識を持ってほしいです。
目的のために手段を選ばない方々は、これを機に賀茂地区から消えていただきたい。
投稿: 案山子 | 2010年7月 3日 (土) 17時54分
案山子さん、いつも元気いっぱい、直球勝負のコメントありがとうございます。いやあ、賀茂郡の住民の皆さんは、なめられてますよ。こんな報告書を真に受けると思われているのですよ![](http://emojies.cocolog-nifty.com/emoticon/sign03.gif)
![](http://emojies.cocolog-nifty.com/emoticon/angry.gif)
投稿: きのじゅん | 2010年7月 5日 (月) 00時02分
本文中にも記しましたが、Twitterのタイムスタンプはアメリカ東海岸時刻で表示されてしまう場合があるようです。今回のケースがそれにあたる可能性があるため、記載内容に修正を加えました。
投稿: きのじゅん | 2010年7月 6日 (火) 11時38分
9/25,10/30,12/4 どういったお話しをされるのか興味がありますね。
国際医療福祉大学大学院公開講座 2010 年度 後期 開講コース申し込み受付中
http://www.hci21.org/download.php?type=news&newsId=48&file=1
投稿: | 2010年7月16日 (金) 01時32分
大変面白い情報をありがとうございます。このブログでもよく話題に出る方々が、「地域医療再生事業の具体的実施状況」について講義をしてくださるようですね。
上野原の江口市長さんがいつのまにか市立病院長兼務になっており、指定管理者の地域医療振興協会の職員になったのかとびっくりしましたが、残念ながら誤報のようです。昔直営だった時に病院長をされていた方ではありますが。
百条委員会の出番は12月4日ですか。それまでにどうなっておりますかね。
投稿: きのじゅん | 2010年7月16日 (金) 19時52分