湊病院問題 組合定例議会で共立湊病院の患者数減少などが批判される
8月26日伊豆新聞に、8月25日の共立湊病院組合議会の記事が掲載されていました。以下は記事の要約です。記事の順番とは少し入れ替えています。
- 病院事業報告によると、2009年度の入院延べ患者数36950人(101.4人/日、対前年度3114人減)。外来延べ患者数79873人(272.6人/日、1842人減)
- 入院患者の78.9%、外来患者の86.4%が下田市と南伊豆町。
- 平成23年4月以降の指定管理者については、地域医療振興協会に要望中だが回答が不透明。幅広く指定管理者を求め迅速に対応するとした。
- 山田昭男議員(西伊豆町)と横島隆二議員(南伊豆町)が一般質問。地域医療振興協会による共立湊病院の運営状態について質問。
- 山田議員は、病床稼働率が70%を切ると交付税が削減される可能性がある。共立湊病院から他の病院への紹介も多くなっているのではと質問。
- 横島議員は、伊豆下田病院へ患者を紹介するのは倫理に反する行為ではないのかと質問。
- 組合管理者(南伊豆町長)は、来年3月末まで契約に基づいた医療の履行を求め、事実関係を調査した上で勧告したい。
- 組合事務局によると、今年4月から7月の病院紹介は618件。このうち415件が圏域内への紹介だった。共立湊病院の整形外科医師が伊豆下田病院へ転任したことも要因とみられる。
- 議会では新病院職員宿舎建設事業4億8126万円を盛り込んだ平成22年度病院会計補正 および、平成21年度決算を可決。
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ここから先は個人的感想です。
まず、大きな誤報がありますので指摘しておきます。8番目の項目に関して。湊病院から伊豆下田病院に転任したのは、外科の吉田副院長(現 伊豆下田病院院長)であって、整形外科医師ではありません。伊豆下田病院は整形外科の診療をしていません。
圏域内への患者紹介が多かったのは、内科の医師が退職するにあたり、圏域内の開業医の先生方等へ、受け持ち患者の多くを紹介したためです。この医師は永住を決意して南伊豆町に家を建てましたが、今回新築して何年も経っていないその家を手放してこの地を離れていきました。その事実の重みも組合の方々には伝わっていないばかりか、運営協議会や議会での批判材料に使われているのが残念でなりません。
5とか6を見ますと、まるで協会が湊病院から、伊豆下田病院へ患者を紹介して湊病院の患者をわざと減らしているような印象を受けますが、そのような事実は全くありません。
共立湊病院からの患者離れの傾向は現在も顕著に続いています。延べ入院患者数は、4月 3208 5月 3155 6月 2941 7月 2863人。外来は、6133, 5425, 5966, 5765人。救急車の受け入れ台数だけは増えていて、113, 119, 109, 128 となっています。
一方伊豆下田病院については7月だけの数しかありませんが、延べ入院1699人, 外来 755人, 救急車 0だったそうです。外来患者数は26人/日に過ぎず、診療所にも負けています。(ノ_-。)
これだけゴタゴタしていて先行きがはっきりせず、常勤医師数も少しずつ減ってしまっている状況なので、患者数が減っていくのは当然の結果と言えます。これからもどんどん患者離れは進んでいく懸念があります。もちろん、できるだけ影響を最小限に食い止めるように努力が必要ですが、混乱を引き起こしている一部事務組合側にも責任の一端がある事は理解しているのでしょうか。協会に何か勧告したからといって患者数は増えないと思います。
また、伊豆新聞は記事をまとめる前に事実関係を病院関係者に確認するなど、公正公平な報道を行っていただきたいと思います。
3番目の項目…また二股かけるのでしょうか。尤も他にあてがあるのならそちらに頼んでもらったほうがいいのかも知れません。
さて、協会批判の目立つ記事の中でこそっと目立たないように重要な事が書かれていました。新病院の職員宿舎の建設費4億8千万円ほどが、今年度補正予算で可決されています。JMAさんの計画の中に職員宿舎の建設が含まれていましたが、そのまま実現されるようです。病院本体が約17億円でした。規模がわかりませんが職員宿舎って意外にお金がかかるものなのですね。あまり意味の無い計算ですが新病院計画は約1200万円/床ですから、約40床相当となります。
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コメント
退職された内科の先生にはお気の毒でした.
ただ,地域医療振興協会として運営を任されているので,退職による医師減少分を,グループから補充して,診療を継続することはできないのでしょうか.
平成23年3月までに,現在がんばっている先生方や看護婦さん,スタッフのみなさんが,さらに減って,診療に支障をきたすことのないよう,お願いしたいと思います.
投稿: | 2010年8月28日 (土) 19時20分
匿名さん、コメントありがとうございます。
ご意見はごもっともと思いますが、現実はなかなか困難と思われます。
実際に湊病院には既に東京北社会保険病院からの臨時支援が入っていますし、今後も協会全体として支援体制が組まれると思います。ただ、昨今の医師不足の中でも、へき地の救急病院でバリバリ頑張ろうという奇特な医師は最も不足しているジャンルでして、来年3月で契約切れとなる病院に、そうそう簡単に常勤医を補える物ではありません。定住していた若手の医師を喪失した穴の大きさは計り知れないのです。
病院のスタッフにしても、各の生活がありますから、来年3月末で協会の撤退が決定した以上、新しい職場を求めて退職する人を出てくるのは当然であり、それを不足無く補う事は実際上は不可能ではないでしょうか。
一部事務組合の方々は、そのような事態をけしからんと批判するのでしょう。公設公営だったら首長さんたちがスタッフ集めに奔走している所なんですが。
投稿: きのじゅん | 2010年8月28日 (土) 22時04分
>ただ,地域医療振興協会として運営を任されているので,退職による医師減少分を,グループから補充して,診療を継続することはできないのでしょうか.
こういうことをさらりと言ってのけられるところが中々医療環境というものを理解されていないものだなと思いました。
これをそのまんま他の病院グループ団体や、今度指定管理となるJMAさんに言ってみられたらどうでしょうか。退職医師があれば当然JMAさんのグループから補充されますよね?って。これにプラスして今の協会の立ち場にJMAさんが置かれたとしてもを付け足してもらったほうがいいかもしれませんね。果たして相手はどのような返答をされるか。
投稿: にし | 2010年8月28日 (土) 23時23分
にし さん、コメントありがとうございます。
医療関係者以外に今の日本の医療の現状を知っていただくのも医療関係者の仕事だと思います。自分の知らない世界の事をよくわからないのはお互い様だと思うのです。
賀茂郡も伊東も国立病院で地域医療が支えられてきた歴史があり、地元自治体は医師確保に奔走する事無く、自動的に医療を確保できてきた歴史があります。断水して初めてわかる水道水のありがたみ、という事ではないでしょうか。
投稿: きのじゅん | 2010年8月29日 (日) 00時49分