女川町医療支援活動報告21 転院搬送
今回の支援活動中、転院搬送に同乗する機会がありました。
患者さんは避難所生活中の方。左上下肢の麻痺と意識障害を発症。不整脈(心房細動)があり、脳塞栓(心臓にできた血の固まりが剥がれて、脳の血管につまる病気)が疑われました。診断・経過観察のために頭部CT/MRI検査が必要でしたが、女川町立病院のCT装置は津波をかぶって壊れています。石巻赤十字病院に受け入れをお願いしたところ、すぐに引き受けて下さいました。
女川町立病院から石巻赤十字病院までは約18km。30分程度の搬送時間です。道路は所々未舗装だったり、段差ができています。万石浦沿いの道路は地盤沈下の影響で満潮時に冠水し、通行が妨げられるため、路面が嵩上げされていました。道路脇の家では玄関前に土嚢を積んで対処していました。かなりの不便を強いられていると思います。抜本的な解決もすぐには難しそうです。
女川町と石巻市の境を越え、折立のファミリーマートの交差点で右折。小さな峠を越えて内陸部に向かいます。石巻市で被害の大きかった海岸沿いの地区は今回通過しませんでしたが、被災地域が広大なためあまり片づけが進んでいないと、地元の方から伺いました。
地割れや地盤沈下の影響、また瓦礫を満載したダンプカーの通行で路面は荒れており、応急的な補修はされているものの、橋の前後には大きな段差ができています。ストレッチャー上の患者さんも時折大きく揺すぶられます。制振装置もついていますが、こういう極端な揺れにはあまり効果が無い様子です。旧北上川にぶつかったところで、東岸に沿って進みます。道路は狭く、ダンプカーもたくさん行き交うため、救急車も思うように進めない場面がありました。建設途中の国道398号線バイパスに出るとあとはスムーズ。患者さんの容態にも変化は無く、無事に到着する事ができました。
真新しい石巻赤十字病院は平成18年に移転新築したもので、病床数は402床です。(写真は、仙台から女川に向かうタクシー内で撮影したもの。) 内陸に移転していたため津波の被害を免れました。今や石巻医療圏の急性期医療の最後の砦となっています。(石巻広域消防組合は石巻市、東松島市、女川町の3市町で構成されています。) 今回の搬送中にも、救急車内の無線で他に2件の救急車出動の入電を聞きましたが、全て同院で受けるしか無い状況であり、本当に頭が下がる思いです。もしこの病院が被災していたら、この圏域の救急患者さんは、50km離れた仙台市近辺や、約35km離れた大崎市あたりまで行かなくてはならない所でした。
宮城県ではドクターヘリがまだ運航されていないそうです。早期に導入されると良いですね。
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