書評 「タンザニアに生きる―内側から照らす国家と民衆の記録」
今回御紹介する「タンザニアに生きる―内側から照らす国家と民衆の記録」は、2006年のタンザニア旅行の計画で大変お世話になった Japan Tanzania Tours ( JATA Tours ) を経営されている根本利道さんが書かれたものです。JATA Tours ホームページに掲載されている、ダルエスサラーム通信 ( Habari za Dar es Salaam ) などから、選ばれた記事がテーマ別に編集されています。タンザニアの社会・経済の中に身を置き、その国の内側から見た国の姿を描き出している、非常に希有な本です。
著者は1975年に初めてタンザニアを訪れ、1984年に、ダルエスサラーム大学に入学。その後ダルエスサラームで旅行者を開業し現在まで居住しています。タンザニアに住む邦人や、タンザニアを訪れようとする取材斑、個人旅行者の手配業務の他、タンザニアの農村に滞在するオルタナティブツアーの企画募集なども行い、タンザニアと日本を繋ぐ架け橋としての役割を果たしています。(しかし、この本を読んで改めて、すごい方だなあと感嘆したのです。)
アフリカに興味を持ち、勉強しようとすると、アフリカの歴史が「世界史」の中から欠落している事がわかります。西欧人にとっては暗黒大陸だとしても、そんな呼び名とは無関係に、東アフリカはアラブ諸国やインドなどと、はるか昔から交易などを通じて密接な関係を築いてきました。これまでにも紹介してきた、「タンザニアを知るための60章」や、「スワヒリ都市の盛衰」などの書籍と、「タンザニアに生きる」 を併せて読む事で、タンザニアという国に対する理解を深めることができた、そんな気がします。
今回の本では、タンザニアの政治についても詳しく書かれています。過去の総選挙ごとの節目に書かれた記事を読んでいくことで、良く理解できます。今まで何となく、タンガニーカ(本土)側に比べて、ザンジバルは総選挙の度に暴動が起きたりして不安定なんだなあと思っていましたが、その背景の政治の流れがようやく理解できました。
途上国ではびこる不正や汚職…、ばればれの田舎芝居。残念ながら日本でも状況は似たようなものみたいです。
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