RCGP OHSU UH 訪問記録10 Queensbridge Group Practice 見学
午後からは、ロンドン北東部にある、Queensbridge Group Practice というクリニックを見学した。
クリニックは閑静な住宅街の中にある。街路樹の紅葉が美しい。近隣には高層コンドミニアムが建っている。通りがかる人は意外に白人は少なく、黒人やイスラム系など様々であるように見受けられた。
このクリニック(イギリス英語では Surgery と言う)は、7人のGPが所属する。うち5人が共同経営者 partner で、2人は雇用されている医師である。診療は月~金の午前8時30分から午後1時と、午後は日によって違うが、2時か3時~6時30分まで。水曜日は午前7時から8時と、午後6時30分から7時まで commuter clinic として日中受診が難しい人を対象に診療を行っている。金曜日午後は1時から3時が baby clinic で、午後4時以降は急ぎの症例のみとなっている。
また、午前8時30分~11時30分までの間は電話当番の医師が受診相談に応じている。週末に留守電があった患者さんにコールバックするため月曜日の電話当番はかなり多忙だそうだ。自分の担当医と直接電話相談したい患者さんは、午前中に受付に依頼しておくと、診療終了後にコールバックしてもらえる仕組みも作られている。
診療所の内部を見学させていただいた。診療所医師主体の訪問団なので、皆興味津々である。
診療のスタイルは日本と似ていて、各医師が自分の診察室を持ち、そこに患者さんがやってきて診察する。必要な診察道具はアメリカと同様に壁に設置されており、探す手間や紛失の心配は無い。(左の写真は同行のメンバーが撮影した物を拝借した。)
診療録は電子化されているが、その操作は基本的にキーボードベースとなっており、MS-DOS時代のアプリケーションを思い出させる物だ。タッチタイパーにとっては最も効率的であると個人的には思うが、ビジュアル面では古くさい印象を受けるだろう。電子カルテシステムはかつては多くの会社から出ていたそうだが、淘汰されて現在は主に3社ぐらいの物が使われているそうだ。
イギリスのGPクリニックを特徴づけるのが、全国で機能が統一されている点。どのクリニックにもレントゲン設備は無いし、血液検査の器機も無い。院内でできる検査は検尿(試験紙)や心電図など、プリミティブなものに限られており、レントゲンが必要であれば、設備のある病院に行って撮影して来てもらう必要があるし、血液検査は外注となるので、結果が判明するのに時間がかかる。日本の重装備のクリニックを見慣れているとびっくりするが、プライマリーケアの医療リソースを制限する事で、医療費の膨張を抑えようとする国家施策によるものであろうか。その分GPは、基本的な診療技術、すなわち病歴、身体所見診察などの腕を磨き、五感をフルに働かせる事が要求される。研修や、生涯教育もその点にフォーカスされた物となる事が理解できる。
今回は多人数での訪問でもあり、実際の診療場面を見学する事はできなかったのは残念である。
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