Diana Wynne Jones (ハウルシリーズ)
持続的な学習の一環として英語の小説を読むことを日課としていますが、最近はもっぱら電子書籍を購入することが多くなっています。Dan Brownの作品もすべて読み終わってしまい、次に何を読もうかと考えていたところ、ちょうどテレビで宮﨑駿監督の「ハウルの動く城」が放送されているのを見て、おうそうだこの原作を読んでみようと思い立ちました。
原作となったのはイギリスの女性ファンタジー作家 Diana Wynne Jones (ダイアナ・ウイン・ジョーンズ)が書いた、「Howl's Moving Castle」で、1986年に書かれた作品です。なかなかこれが面白い。女性作家らしく、女性キャラクターの描写が秀逸です。この作品では魔法使いハウルといつも喧嘩をしながらも、内心惹かれているソフィー(魔女の魔法で老婆の姿に変えられている)の嫉妬心や、ヒステリーといった描写がとても面白いのです。一方で魔法を使った戦闘シーンの描写はわりと客観的(遠くから眺めているような描写)であっさりしておりまして、同じ女性作家でもJKローリングのハリー・ポッターシリーズの息を飲む戦いの描写とは非常に対照的という印象を持ちました。
映画のハウルの動く城は、宮﨑駿監督により背景事情に戦争という要素が加えられるなど、かなり映画的に見栄えのするように作り変えられていますし、ストーリーも相当改変されています。原作者としてはどんな気持ちだろうかと思いますが、その事を問うたインタビューも付録として巻末に収録されています。
ハウルのシリーズはこの他に2作あるということで、続いて 「Castle in the Air」を購入。今度はラピュタの原作?と一瞬思いますが、実は全く無関係です。アラビアンナイトの世界とヨーロッパの魔法使いの世界の融合といった作品で、読んでも読んでも ハウルもソフィーも出てこないじゃんと思わせつつ、実は意外な形で登場していたということが後半でわかります。あくまでも脇役ですが。この作品でも女性の心理が巧みに描かれています。何だかいつも怒っていたり、ヒステリーを起こしたりする女性キャラたちが非常に魅力的です。諸国の姫様たちを誘拐して集めたら、とんでもないことに…。
3作目の「House of Many Ways」でも、勝ち気な女性主人公と、ドジで頼りがいの無い男性主人公とのやりとりが非常に面白い。いつまでも子供で居たいハウルと、すっかり魔法使いファミリーのお母さんになって、手の焼ける子供(とオヤジ)の扱いに奮闘するソフィーも相変わらず生き生きと描かれています。
この人の作品は面白くて、やはり子供向けなので読みやすいので、そのまま Chrestomanci シリーズを読み進めています。すでに6冊読み終えて、残る Conrad's Fate を読んでいますが、こちらもお薦めです。ファンタジーでありながら、その世界観を楽しむというよりも、登場人物の心理描写を楽しむ感じです。
どちらのシリーズも続編が読みたい感じですが、残念ながら作者は2011年にこの世を去っており、新作が発表されることはありません。
(Amazon.co.jpでは英語版はヒットしないようです)
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